2022年上半期をふりかえる

やったこと

  • 暇と退屈の倫理学
  • 考える技術、書く技術
  • 学習する組織
  • エンジニアリング組織論への招待
  • チームトポロジー
  • Clean Architecture

ゲーム

生活

  • 音楽鑑賞の環境をアプデした
    • HD660S + ZY-Cable Sennheiser + DX7Pro(OPA627AU換装) + UA3
  • 自室の家具を揃えた(引っ越したのは去年・・)
  • 自重トレーニングを再開した
  • 朝活として、片道徒歩10分のカフェに通い始めた
    • 感触はいいが夏は厳しいかも・・
  • 週末に平日の分の食料をつくりおきするのにTryした

わかったこと

諦めること

上半期はとりわけ内省することに多くの時間を使って、自分の生いたちだったり、これまでのキャリアを通した自分という人間の性質や、その時どきの心身の揺らぎを見つめなおしていた。自分で認めたくないことも含めて多くの気づきがあった中で、特に「そうだったのか」と思わされたのは、自分に完璧主義のきらいがあることだった。自分のことを楽観的だと思っていたけど、思いかえしてみれば全然そんなことはなかった。

「何が完璧といえるのか( ≒ 理想状態)」を定義するのは現状とのギャップを知る上で必要なこと。でもそれが100%実現することはありえない(なぜなら常に理想は変化していくから)。いまここにある現実は諦めて受けいれることしかできない。諦めるというと後ろ向きに聞こえるかもしれないけど、前進するための諦めだってあるはずだ。進むために諦める。その途中で足りてないものがあればその都度拾って行けばいいし、誰かに助けを求めたっていい。

つながっていること

仕事としてやっているソフトウェア開発から、趣味の音楽やゲーム、身の回りの環境や生活まで、全部が少しずつつながりはじめた感覚がしている。どれにどのくらい自分の時間や心を費やす"べき"か、費やして"しまう"かを考えるような、そういう「自分を律したり罰したりしながらふるまいを選ぶ」感覚ではなくて、「自然と定まっていく」感覚。これをもっと広げていきたい。

フローを生むこと

これから先のことや、直近の仕事で必要なことなどをすべて忘れて、好きな本や記事を好きなだけ読む、ということをやってみた。エンジニアという仕事をしていながら、技術に関わるコンテンツにはほぼ触れなかった。それよりも、組織論だったりチームビルディングやアジャイルだったり、そういう「人」に焦点をあてたものを多く読んだ。

自分は案外「人」や、「人が生む熱」が好きなのかもしれない。自分自身フローに入っていたいし、自分のまわりの人も同じようにフローに入れていれば、少なくともいま観測できる範囲において、世界はもっと熱を帯びて楽しいものになるんじゃないか。そうなるように、自分のふるまいを考えていきたい。

次にやること

余白をつくる

インプット/アウトプットは一定続けていきたい中で、ただそればかりを求め続けると自分を律する方向に傾いてしまうので、あまりちゃんとした、定量的な目標は今は立てなくてもいいと思っている。大事なのは、自分の仕事や生活のすべてが、"あるところに自然と定まっていく"感覚を研ぎ澄ませること。そのために余白をつくって、自分自身をふりかえる時間にしたり、気の向くままに時間をつかう。

コトに向かう

余白をつくることと合わせて、目の前にある一つひとつのコトに集中する。仕事でも日々の生活でも、自分のふるまいが誰にどう映るか、どうすれば自身や周りの成長につながるか、改善できそうなポイントはどこか、といったことに気を向けるのではなくて(もちろんそれ自体を目的として行動することもあるけれど)、とにかく目の前のコトに集中して、それを楽しむ。一生懸命がんばる、とは少し違う。あるがままを受け入れて、楽しさや感動をそこから抽出する。それができるともっと"定まっていく"はず。

ふりかえりを反省会や問題解決の場にさせない手法

はじめに

9月の終わり、自分とは別の機能を開発しているチームから、クォーター(7月-9月)のふりかえりをするのでファシリテーションをしてほしいという依頼を受けた。

タイミングよくこんなイベントがあったので聞いていると、おもしろそうなアクティビティが紹介されていた。

retrospective.connpass.com

ポジティブふりかえりマッピング」というもので、どうやら「その期間に起きた出来事や感情のポジティブな側面にのみ着目する(≒問題解決をしない)」アクティビティらしい。

私は問題発見→原因分析→打ち手の検討、のような問題解決のフレームワークを好んで使うことが多かったので、問題解決をしないポジティブなふりかえり…!?と興味をそそられた。

ポジティブふりかえりマッピング

  • はじめに下記の声明に支持し、非難なし(No Blame)ルールで進めるという合意をメンバー内でとる。

  どんな道をたどったにせよ、当時の知識・技術・能力・利用可能なリソース・状況の中で、みんなができる限り最高の仕事をしたはずです。それを心から信じます。

  • 対象のイテレーションで起きた素晴らしい出来事や感情の情報を集める。
  • 同じことをやるとしたら、ほかの方法にはどのようなものがあるか、というアイデアを出し合う。
  • イデアの中から、次のイテレーションで試せそうな小さな実験や調整を話し合って決める。

内容の詳細はこちらのブログに記載されている。*1

kawaguti.hateblo.jp

実践してみた

状況

  • リモートで開催した。*2
  • 開発チーム3名+ファシリ1名(私)がGoogle Meet上で会話する。
  • オンラインホワイトボードツールのMiroを使用する。
  • 時間は1時間半で設定されている。
  • クォーター(7月~9月)をふりかえり、期初にたてたOKR*3と照らしたフィードバック(良かった点、改善点など)をアウトプットしたい。
  • チームのOKRの達成率は100%に至らなかった(=反省や問題点に目がいきやすい)。

どう進めたのか?

実際に試したアクティビティを列挙し、出来るだけ簡潔に内容を書いてみる。(紹介した記事に書いてある内容をベースに、OKRのフィードバックという目的に沿うようにいくつかアレンジを入れているので、都度説明を記述する。)

1. アイスブレイク

Youtubeでよく見る好きな動画を教えてください」、と言い各メンバーに付箋を書いてもらい、順番に理由と合わせて発表してもらった(Youtubeを見ない人は好きな映画を書いてもらった)。ポジティブなふりかえりがテーマなので、明るい雰囲気にするため自身の好きなことを語ってもらえるような内容にしたが、メンバーごとの個性が出て盛り上がっていた。

2. 場(トーン)の設定

このふりかえりはポジティブな側面に着目するものという趣旨と全体の流れを説明した後、重要な前提として上記の声明を読み上げた。ふりかえりに慣れているメンバーなので、内容を復唱させたり、一人一人に同意するか尋ねることはしなかった。

3.情報収集と整理

まずはじめに今クォーターで起きた「事実」のみを付箋に出してもらい、タイムライン上に並べてもらった。

他の人の付箋にわからない内容がないか尋ねた後、次に別の色の付箋で「よかったと思うこと」を、先ほど出した「事実」の近くに出してもらった。

その後、近しい内容の付箋をグルーピングして、そのグループの名前をつけてもらった。ここまでは黙々と個人作業をしてたまに確認のコミュニケーションが発生するイメージ。

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ここまでのホワイトボードのイメージ

工夫したポイントは以下。

  • 「どうしても俎上にあげたい反省や問題点がある場合はポジティブ変換してください。」と促した。*4
  • 内容の捕捉や詳細説明がメンバーからあった付箋には、議事録的なものを書いた。
  • オンラインだと「付箋を書いたりグルーピングしている手が止まったかどうか」がわかりづらいので、作業が終わった人は赤い星のエリアにカーソルを移動してもらうようにした。

1つ目のポジティブ変換をさせたのは、「腹に抱えたネガティブなことを言わずにモヤモヤさせるのを防ぎたい」という意図によるもの。あくまでもここは情報収集のフェイズなので、ネガティブを含めて全ての情報をテーブルに乗せきることを重視した。

4.投票

「ほかの方法を探すに当たって、どのグループが最もアイデアが膨らみそうか」という観点で、グループに対してドット投票を行い、投票した理由をそれぞれ説明してもらった。

(票や認識が割れているようであれば、マトリクスを組んで重み付けするなどのアクティビティを考えていたが、今回その必要はなかった。)

5.ほかの方法

投票が多かったグループの話題について、「同じことをやるとしたらほかの方法にはどんなものがあるか」を出してもらった。

今回はこのアイデアを出しやすくするために、その前段にいくつかのアクティビティを挟んだ。

  • [深掘り] 改善アイデアを出すポイントをより明確にするのと、時間の都合上アイデアが発散し過ぎるのを防ぐために、投票が多かった付箋を中心に置き、あえて問題解決的なWhyのロジックツリーを組んだ。
  • [理想の状態] 深掘りで明確になったポイントが改善されるとどんな状態になるか、メンバー内で景色を合わせてもらった。
6.アクション

ほかの方法で出たアイデアの中から、次のクォーターで実験したいことや、活かせそうなものを話し合いで選び、一つのSMART*5なアクションに落とし込んだ。 

何が起きたのか?

  • ふりかえり全体でOKRを達成できなかった反省ではなく、「もっとこうしてみると達成率を伸ばせそう」という視点で会話がなされていた。
  • 結果として、「次のクォーターでなりたいチームの姿」と、それに付随する具体的ないくつかのアクションが決まった。
  • OKRのフィードバックとして、上記の改善アクションとは別に"今クォーターで良かったこと"を自然にまとめられた。
  • 「思ったより"良かったこと"が多く出て嬉しい」「最初の声明でグッときた」などポジティブな感想をもらった

感想

  • 「ものごとのプラスの側面を見つつより良いアイデアや実験を出す体」で話を進めることで、次に繋がるような前のめりな議論がされやすく、会全体の雰囲気をいい感じに保てていた気がする。
  • ポジティブ変換や「アイデア」などは若干言葉遊び感があり、実際やっていることは"問題解決"かもしれないが、ポジティブな角度からそれを行えるのが「ポジティブふりかえりマッピング」の良い点だと思った。
  • 今回は問題解決的なアクティビティを途中に挟んだが、これをやらない方がもっとアイデアが拡散してより実験的なアクションが出せる感覚があるので、ふりかえりの時間やメンバー、ファシリの慣れに応じて内容を調整することが大事。

まとめ

「ポジティブふりかえりマッピング」はものごとのプラスの側面に着目しながら問題解決にアプローチできるハッピーな手法。

ふりかえりをするとどうしても雰囲気が暗くなってしまうといった悩みがあるチームには一度試されることをおすすめしたい。

*1:原文は「Agile Retrospectives」の著者リンダ・ライジング氏のこちらの記事

*2:オフラインでお菓子を食べながら行う予定だったが、まさかの台風予報で前日に急遽オンラインへ切り替えた。

*3:Objectives and Key Resultsという目標管理の手法。

*4:「リリース直前にバグが発覚した」が問題ならば、「リリース前にバグに気付き、修正することができた」と変換するなど。

*5:明確な目標を立てるための指針。Specific(具体的か)、Measurable(計測可能か)等。